微生物とは

1. 微生物って何だろう

 微生物とは、その名前の通り微小な生物です。
土の中や水の中、空気中にもさまざまな微生物が棲んでいて、私たち人間が生きていく上でも重要な影響を受けています。
 例えば、お酒や焼酎、ビールも微生物によって造られ、醤油や味噌、パンも微生物によって作られます。また、納豆、チーズ、ヨーグルトを始め漬物も微生物による発酵過程で造られます。これらは微生物が発見された300年前よりずっと昔の数千年前から人間の知恵で造られていました。
 また、逆に私たち人間にとって敵となる病原菌も微生物で、お風呂や部屋の壁についているカビ、大腸菌も微生物です。しかし、川の水や海、空気の浄化も微生物が大いに関与しています。
 この様に私たち人間だけでなく、動植物にもさまざまな影響を受けています。
 生物には大きく分けて動物と植物と原生生物に分けられます。微生物はこの原生生物の中に含まれます。図1は微生物の分類表です。

 

微生物の分類表

私達人間は生まれた時から体が大きくなりますが、これは体の中の細胞が組織分化しているわけで、微生物はこの組織分化がないことが特徴です。
 また、動物のように口や歯、心臓などはなく、植物のように根、茎、葉がありませんが、生きるための栄養は動物や植物と同じ栄養物を食べて生きています。

 

2. いろいろな微生物

動物や植物にはいろんな種類があるように、微生物もそれぞれ多くの種類があります。
 形や大きさ、増殖の方法などさまざまな種類がありますが、ここでは代表的な微生物を取り上げます。
2‐1 細菌
私たちが微生物の事をしばしばバクテリアと呼んでいるのが、実はこの細菌です。
幅がほぼ1μ(ミクロン;1000分の1mm)以下の小さな単細胞生物で、細胞分裂によって増殖します。
大豆の発酵食品である納豆の製造で用いられる納豆菌。チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳酸を生成する乳酸菌。私たち人間や哺乳動物の腸内にいる大腸菌。病原菌として有名な腸チフス菌、ボツリヌス菌もこの細菌の種類に含まれます。

 

2‐2 放線菌
長い菌糸(糸のように長い)を持ち、この菌糸の幅が約1μで糸状に増殖します。
太平洋戦争の前から日本の死亡原因の第一位であった結核を治す薬として、この微生物から取れた産物(酵素)であるストレプトマイシンが有名です。また土の臭いはこの放線菌の臭いで、生ゴミや牛糞などを堆肥にするときに役立つ重要な微生物で、その生態や能力はまだほとんど解明されていません。

 

2‐3 酵母
球形、卵形、楕円形の物が多く、直径が約5μで前出の細菌よりも大きい。
アルコール発酵をするものが多く、古くから酒類の醸造としてビール酵母、酒酵母があり、アルコールの製造、パンの製造としてパン酵母(通称イースト菌とも呼ぶ)があります。

 

3. 微生物の構造と機能

微生物の細胞は核膜、仁、ミトコンドリアを持つ高等微生物とこれらを持たない下等微生物があります。酵母は高等微生物で細菌や放線菌は下等微生物です。
下記は酵母の微細構造です。

酵母の微細構造

4. 微生物の栄養

地球上のすべての生物は生きるために栄養を取るように、微生物も体の中で構成成分を合成するためと、この合成に必要なエネルギーとして栄養を取ります。これは自ら生きるためと、分裂して増殖するためです。
この増殖に必要な元素として比較的多量に要するものは、C(炭素)、H(水素)、O(酸素)、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)で、比較的微量な物としてはMg(マグネシウム)、K(カリウム)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Mo(モリブデン)などがあります。
これらの量は別として、それぞれ動物や植物と同じです。もちろん私たち人間も同じです。
その他、特殊な微生物としては、エネルギーとして光を必要とする物や、無機物(無機化合物)を必要とする物もあります。

 

5. 好気性分解と嫌気性分解

微生物をそれぞれ比較する方法はいろいろありますが、私たち人間にとって最も身近な事としては、生物として酸素を必要とする微生物と必要としない微生物があります。
酸素を必要として生きている微生物を好気性微生物といい、有機物を分解する状態を好気性分解といいます。また、酸素を必要としない微生物を嫌気性微生物といい、有機物を分解する状態を嫌気性分解といいます。酸素があってもなくても生きることが出来る微生物を通性嫌気性微生物といい、この状態では通性嫌気性分解といいます。
例えば、酸素があれば嫌気性微生物は生きることが出来ず減少していきます。その代わりに好気性微生物が有機物を分解しながら増殖していきます。
この様な酸素がある、無いといった環境で棲息する微生物もそれぞれ異なり、有機物を分解していく能力も異なります。
通常、有機物を分解して別のものに変えてしまう速さは好気性分解の方が速く、嫌気性分解は遅いです。